手術支援ロボット「ダビンチ」

ロボット支援手術は、今までの内視鏡下手術の利点をさらに向上させうる、次世代の医療革新の一端を担った分野です。

手術支援ロボットの最新機種「ダビンチ5」

次世代の低侵襲性と高精度を実現

2025年に発表されたインテュイティブサージカルの第5世代となる最新モデル「ダビンチ5」は、従来の「ダビンチXi」や「ダビンチSP」で培われた技術を基盤に、触覚フィードバックや高精細3D視覚、情報処理能力の飛躍的向上など、150を超える改良点を備えたフラッグシップモデルです。この進化により、外科医にとってはより直感的で安全な操作が可能となり、患者さんにとってはさらに体に優しい低侵襲手術の実現が期待されます。

主な特徴

触覚フィードバック(Force Feedback)

これまでのロボット支援手術では、術者は映像情報に頼って操作を行っていました。ダビンチ5では、鉗子を通じて加わる力を術者が“感じ取れる”ようになり、繊細な臓器や血管を傷つけにくくなりました。この機能により、特に精密さが求められる心臓外科や消化器外科の分野で大きな進歩が期待されています。

高精細な3D視覚性能

解像度は従来比で大幅に向上し、色の再現性も改善されました。術野をより立体的かつリアルに映し出すことで、深度感を把握しやすくなり、複雑な手術操作でも正確さを維持できます。

圧倒的な情報処理能力

ダビンチ5は従来比で10,000倍にあたる情報処理能力を備えています。その結果、映像処理や鉗子操作のレスポンスが飛躍的に向上し、術中のストレスを軽減。術者の集中力を維持しやすくなっています。

統合ワークフローと快適な操作環境

気腹装置や電気メスなどを術者が直接コントロールできるようになり、手術の進行が効率化されました。また、サージョンコンソールの設計も見直され、長時間の手術でも快適な姿勢で操作できるようになっています。

学習支援プラットフォーム(My Intuitive+)

遠隔での手術支援(Telepresence)、手術データ解析(Case Insights)、3Dシミュレーション学習(SimNow2)といった最新機能が組み込まれています。これにより、術者教育の質が飛躍的に向上し、次世代外科医の育成にも大きく寄与します。

単孔式 手術支援ロボット「ダビンチSP」

最少1カ所の切開創で低侵襲性と整容性を実現

ダビンチSPサージカルシステム〈製品画像:インテュイティブサージカル合同会社提供〉

ダビンチSPは、アクセスに制限のある術野にアプローチできるようロボットアームを1本にしたシングルポート(単孔式)で設計されているのが特徴です。既存のダビンチが複数のアームで構成するマルチポート(多孔式)なのに対し、ダビンチSPはアームが1本のため切開創も最少1カ所で済み、患者さんの体へのさらなる負担軽減や整容性の向上が期待できます。とくに、マルチポートでは難しかった体腔内の深く狭い術野で威力を発揮すると考えられます。

主な特徴

  • 計1~3カ所の切開創で手術を行えるため、術後の疼痛が軽減し、患者さんの体に優しい手術が提供可能
  • ロボットアームに取り付けられた直径2.5cmのカニューラと呼ばれる筒から、カメラ(内視鏡)と3本のインストゥルメント(専用鉗子)を体腔内に挿入して手術を行います
  • ロボットアームは360度回転可能
  • カメラは、ダビンチサージカルシステム初となる2関節を有するフレキシブルに近い軟性鏡で、角度・方向を自由に操作できます。術野画像も3DHDで鮮明
  • カニューラから体内に挿入されるインストゥルメントは、狭い術野内でもインストゥルメント同士が干渉しないよう多方向に柔軟に屈曲します    

〈製品画像:インテュイティブサージカル合同会社提供〉

ダビンチSPは従来のマルチポートシステムと同様、ペイシェントカート(写真右)、サージョンコンソール(同左)、ビジョンカート(同中)の3つのコンポーネントから成り、執刀医は患者さんと同じ手術室内のサージョンコンソールからロボットアームを操作して手術を行います。

適応領域

一般消化器外科、胸部外科(心臓外科ならびに肋間からのアプロ—チによる手術を除く)、泌尿器科、婦人科および頭頸部外科(経口的手術に限る)