手術支援ロボット「ダビンチ」

ロボット支援手術は、今までの内視鏡下手術の利点をさらに向上させうる、次世代の医療革新の一端を担った分野です。

手術支援ロボットの最新機種「ダビンチSP」

最少1カ所の切開創で低侵襲性と整容性を実現

ダビンチSPサージカルシステム〈製品画像:インテュイティブサージカル合同会社提供〉

ダビンチSPは、アクセスに制限のある術野にアプローチできるようロボットアームを1本にしたシングルポート(単孔式)で設計されているのが特徴です。既存のダビンチが複数のアームで構成するマルチポート(多孔式)なのに対し、ダビンチSPはアームが1本のため切開創も最少1カ所で済み、患者さんの体へのさらなる負担軽減や整容性の向上が期待できます。とくに、マルチポートでは難しかった体腔内の深く狭い術野で威力を発揮すると考えられます。

ダビンチSPの特徴

  • 計1~3カ所の切開創で手術を行えるため、術後の疼痛が軽減し、患者さんの体に優しい手術が提供可能
  • ロボットアームに取り付けられた直径2.5cmのカニューラと呼ばれる筒から、カメラ(内視鏡)と3本のインストゥルメント(専用鉗子)を体腔内に挿入して手術を行います
  • ロボットアームは360度回転可能
  • カメラは、ダビンチサージカルシステム初となる2関節を有するフレキシブルに近い軟性鏡で、角度・方向を自由に操作できます。術野画像も3DHDで鮮明
  • カニューラから体内に挿入されるインストゥルメントは、狭い術野内でもインストゥルメント同士が干渉しないよう多方向に柔軟に屈曲します    

〈製品画像:インテュイティブサージカル合同会社提供〉

ダビンチSPは従来のマルチポートシステムと同様、ペイシェントカート(写真右)、サージョンコンソール(同左)、ビジョンカート(同中)の3つのコンポーネントから成り、執刀医は患者さんと同じ手術室内のサージョンコンソールからロボットアームを操作して手術を行います。

ダビンチSPと既設のダビンチXi

ダビンチSP

2022年9月22日付けの製造販売承認取得を経て、米国インテュイティブサージカルの日本法人、インテュイティブサージカル合同会社が2023年1月31日に販売を開始。日本での展開は、米国、韓国に次いで3カ国目となります。当院への納入は同年2月25、26日に行われました。

適応領域

一般消化器外科、胸部外科(心臓外科ならびに肋間からのアプロ—チによる手術を除く)、泌尿器科、婦人科および頭頸部外科(経口的手術に限る)

ロボット支援手術

サージョンコンソール

図1.サージョンコンソール

手術医療の世界において、手術機器の開発は止まることなく現在も進んでおり、そのひとつがRobotic Surgery ロボット手術である。
現在、最も市場に普及しているロボットは、内視鏡下手術支援ロボットといわれるda Vinci Surgical System(Intuitive Surgical, Inc.、以下、da Vinci)である。
ロボット支援下手術では、執刀医はサージョンコンソールという、いわばコックピットで手術を行う(図1)。ビューポートをのぞき込み、三次元表示モニターを見ながら、手では2本のマスターコントローラーを、足ではフットスイッチを操作することによって手術を行う。

ペイシャントカート

図2.ペイシャントカート(ダビンチXiサージカルシステム)

実際に手術を行うのはda Vinciのペイシャントカート(図2)である。ペイシャントカートは、サージョンコンソールより発せられた執刀医の指示を忠実に行う。ペイシャントカートには専用カメラの装着アーム1本と、da Vinci用の鉗子の装着アームが2または3本ある。da Vinciの鉗子は多関節の高性能鉗子で、さまざまなタイプの鉗子や尖刀などが準備されている。また、術者の手と鉗子の動きの縮小倍率を調整することができるスケーリング機能や、術者の手の震えを除去できる手ブレ防止機能がついている。

このda Vinciを用いると、腹腔鏡下手術の弱点である鉗子動作の制限や二次元での操作などといった問題点が克服でき、より安定した精度の高い手術が可能となる。

確固たる信頼を育む高度な医療技術

先端医療

当院では、大学病院としてより高度な医療を深く、広く追究し、研鑽を重ねてきました。その結果、現在では、複数の医療分野で日本のトップレベルの実績をあげています。

低侵襲治療

ロボット支援下内視鏡手術・腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術における傷をできる限り小さなものにし、患者さんが早期に社会復帰できる医療をめざし、当院では低侵襲手術に積極的に取り組んでまいりました。早い段階から内視鏡下手術を取り入れ、前立腺がん等の泌尿器科手術・胃がん・大腸がん・食道がん・肺腫瘍・婦人科腫瘍、肝腫瘍、膵腫瘍の分野で多くの実績を積み重ねております。

ダヴィンチ低侵襲手術トレーニングセンター

臨床とタイアップした日本初の訓練施設

急速に普及が進む手術支援ロボット「ダビンチ」において、外科医の基本操作や技術の向上を目的に開設された訓練施設。
2012年4月に本学内にオープンした施設で、先端ロボット・内視鏡手術学講座の宇山一朗教授がセンター長を務めています。臨床と結びついたトレーニングセンターとしては日本初となり、全国から多数の医師が訪れ、技術向上のため日々研鑽を積んでいます。

施設では、ダビンチの基本操作を学ぶとともに、藤田医科大学病院の手術見学も可能です。将来的には、基礎コースの修了者を対象に、さらに高度な技術を習得できる上級コースを設置。日本におけるロボット手術の普及や発展に寄与する中心的な役割を担うべく整備を進めています。