NF1外来

神経線維腫症1型(NF1)とは

神経線維腫症1型(NF1)は、カフェ・オ・レ斑や神経繊維腫、骨や眼、神経系などにさまざまな症状があらわれる疾患です。NF1遺伝子に生まれつき特徴があることが原因とされています。レックリングハウゼン病とも呼ばれています。
年齢があがるに伴って新たな症状が出てくる可能性があり、症状の中には早期発見が大切なものやご自身で気づきにくいものもあるため、定期的な受診が必要です。

NF1と関連する症状と対策

NF1と関連する症状がいくつかあります。個人によってどのような症状があらわれるかや症状の程度は異なります。いつ頃にどんな症状があらわれやすいのかを知ることで、新たな症状に気づきやすくなったり、早めに対策がとれることがあります。
NF1外来に定期的に受診いただき、年齢にあわせた適切な検査や治療を行います。藤田医科大学病院では全身MRI検査での神経線維腫の高精度なスクリーニングが可能です。
 

全身MRI

 全身MRIでは、MRI装置を用いて頭部から骨盤部までの主な臓器を検査します。NF1の場合、医師や患者さんも認識できていないような腫瘍(神経の神経線維腫やびまん性神経線維腫)などを調べることを目的としています。X線被曝などがなく、短時間で全身を検査できる最新の検査法です。
通常のMRI検査では、1回の検査で撮影できる範囲は限られるため、全身を撮影するためには何回もMRI検査を受ける必要があります。全身MRIでは最新の寝台移動技術と全身撮像が可能な大口径MR装置を用いるため、頭部、胸部、腹部、骨盤部などを1回の検査で撮影できます。様々な悪性腫瘍などにおいてPET/CTと同等あるいはそれ以上の診断能を有する最新検査法であり、全身疾患であるNF1のガイドラインにおいても推奨されています。
全身MRI検査は通常1時間程度かかりますが、藤田医科大学病院ではキヤノンメディカルシステムズ社製1.5テスラあるいは3テスラ MR装置を使用し、最新の撮像法及び人工知能再構成を用いて、患者さんの負担を軽減した検査が可能です。本検査は小児における鎮静などの負担を軽減し、小児から成人までの様々な年代の患者さんにX線被曝などに関する不安を払拭し、安全で安心な最新の画像診断を提供するとともに、NF1診療チームにて最良の医療を提供することを可能にします。 

10代 神経線維腫症 I型患者の全身MRI

主診療科においては顔面の神経線維種(赤矢印)に対する治療と画像診断のみが行われていた。しかし、最新の全身MRIにて全身検索を行い、胸椎から腰椎の両側の多発神経線維種(白矢印)と両側坐骨神経から下腿の神経にかけての多発神経線維種(黄色矢印)が確認され、NF1診療チームでの診療科横断型診療の重要性が確認された。

(放射線診断学:大野医師)

NF1を疑う症状

臨床的診断基準

  1. 6個以上のカフェ・オ・レ斑
  2. 2個以上の神経線維腫(皮膚の神経線維腫や神経の神経線維腫など)またはびまん性神経線維腫
  3. 腋窩あるいは鼠径部の雀卵斑様色素斑(freckling)
  4. 視神経膠腫(optic glioma)
  5. 2個以上の虹彩小結節(Lisch nodule)
  6. 特徴的な骨病変の存在(脊柱・胸郭の変形、四肢骨の変形、頭蓋骨・ 顔面骨の骨欠損)
  7. 家系内(第一度近親者)に同症

7項目中2項目以上で神経線維腫症1型と診断する。
神経線維腫症1型診療ガイドライン2018より作成

NF1診療チーム

診断科横断的に多職種が連携した診療チームを作り、きめ細やかなサポートをおこなっています。
 

診療体制

NF1チーム一覧

所属 氏名
腫瘍医学研究センター 佐谷秀行
形成外科 奥本隆行
放射線診断学 大野良治
皮膚科 有馬豪
脳神経外科 大場茂生
小児科 石原尚子
整形外科 川端走野
がんゲノム診療科 植野さやか
遺伝カウンセリング 大江瑞恵

 

NF1外来について

藤田医科大学病院のNF1外来では、NF1が疑われる方・NF1と診断された方とそのご家族のための診療を行っています。お一人おひとりの症状や発症部位、進行状態にあわせて、関連する診療科と診療科横断的に多職種が連携して、サポートをします。かかりつけの先生の診療も継続しながら、受診いただけます。当院は日本レックリングハウゼン病学会による認定も取得しています。
 

NF1外来のおもな内容

  • NF1の診断・診断のための遺伝学的検査の相談
  • 小児の叢状神経線維腫に対するMEK阻害剤の投与
  • サーベイランス(遺伝的な特徴に合わせた定期的な検査)の実施
  • ご本人やご家族に対する遺伝カウンセリング
 
*NF1外来の遺伝カウンセリングでは、NF1に関するさまざまな疑問、お困りのことなどについて相談できます。お一人おひとりにあわせた情報提供や支援を行い、必要に応じて関連する専門家へのご紹介も行います。

NF1外来 外来医師担当表


石原准教授
小児
(隔週)

  植野准教授
成人
(午後)
     

医療機関の方へ

 
小児科 石原 尚子 准教授

NF1は乳児期早期からのカフェ・オ・レ斑で疾患を疑われ、小児科へ相談に訪れる患者さんが多いと思います。NF1は出生3,000人に一人、希少疾患の中では比較的頻度が高く、気をつけるべき合併症もよく知られています。また2022年にNF1の分子標的薬であるセルメチニブ硫酸塩の承認発売とともに、正確な遺伝子診断に基づいた疾患管理が求められるようになりました。お子様の成長発達を含め、かかりつけ小児科医と連携して、NF1の専門診療を行ってまいります。

がんゲノム診療科 植野 さやか 准教授

主に成人期の患者さんの診療を担当させていただきます。特に成人期以降のがん発症リスク増加に対して、適切な精密検査(サーベイランス)を提供していきたいと考えております。また、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査にも対応してまいります。小児期から成人期まで途切れることなく、患者さんやご家族の思いに寄り添ったNF1診療が実践できるよう、小児担当の石原先生と協力して、診療に当たらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。