下部消化管(炎症性腸疾患)

消化器内科の下部消化管(炎症性腸疾患)について

主な対象疾患:潰瘍性大腸炎・クローン病

炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:IBD)は「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」に代表される慢性腸炎を来す疾患の総称です。IBDは下痢や腹痛など胃腸の症状のみならず口内炎、関節痛、皮膚障害など全身に影響を及ぼします。長期的には病状が悪い時期(再燃期)と落ち着いている時期(寛解期)を繰り返すのが特徴です。近年、国内外の先進国を中心に患者数は急速に増加していますがIBDの原因はわかっておらず、このため完治する治療がないため国の難病指定を受けています。現在は様々な有効な治療法が開発されて治療が奏功すれば日常生活に支障はありません。愛知県内では1万人以上の患者数となっており今後も増加が予想されています。藤田医科大学病院ではこれまでもこの難病に立ち向かい1,000人以上の患者さんの診断と治療を行ってきました。

炎症性腸疾患(IBD)センター紹介

2023年に消化器内科、総合消化器外科、小児科、小児外科、救急総合内科の医師が連携し、炎症性腸疾患(IBD)センターを開設しました。多くの診療科、看護師、栄養士、薬剤師等の多職種と連携し患者さんに合った安心・安全で高度な医療を提供します。またプレプロバイオティクス講座と連携して腸内細菌叢などを用いた当院オリジナルな研究を基に新規の治療開発にも挑戦しています。

高度な医療

IBDの診断に欠かせない内視鏡(大腸内視鏡、小腸内視鏡、カプセル内視鏡)、CT、MRI等を用いた画像診断。バリウムを用いた小腸造影検査。約40分で判定出来る新たな血清バイオマーカーであるLRGや即日判定出来る血中薬物濃度の測定。TNF阻害薬、IL12/23、IL23抗体製剤などの各種生物学的製剤治療、接着分子阻害薬、JAK阻害薬、S1P受容体調節剤などの分子標的薬標的薬治療、副作用の少ない新しいステロイド(ブデソニド製剤)、様々な薬効機序を持つ5-アミノサリチル酸製剤など多岐にわたるIBD治療薬すべてを導入しています。また、血球成分除去療法、クローン病の狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張。負担の少ないロボット手術、術後再狭窄の少ないKono-S式吻合法。難治性痔瘻に対するヒト体性幹細胞加工製品(ダルバドストロセル)や短腸症候群に帯する組換えヒトGLP-2アナログ(テデュグルチド)治療などの治療を取り入れています。医科プレ・プロバイオティクス講座と連携して腸内細菌を用いた当院独自の研究をもとに安全かつ有効な当院オリジナルの治療サプリメント、治療法などの開発を進めています。また、この地域のIBD診療の指導者的立場でありIBD専門医の養成や若手医師へのセミナー開催など中心的役割を担っています。